1万円のルームランナーと生涯労働契約

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ある日の夜、志穂さんが言いました。

「1万円のルームランナーほしいなぁ」

ルームランナーとはジムにある、ちっちゃい動く歩道みたいなやつです。

よく子供がエスカレーター逆走して、
「みてー、歩いてるのに動かなーい!!」
とかはしゃいでるのを大の大人がやる道具です。
あっ、ハムスターのくるくる回すやつも同じですね。

んっ?なんか今、多くの方を敵にまわした気がする。

それが欲しいと言っているんですね。

「買えばいいじゃん」

僕は即答しました。1万円で健康が手に入るなら安いもんだ。
さらに志穂さんは言いました。

「健康は大事だよ。私70歳になってもディズニー行きたいし」

70歳になってもミッキーに会いに行くための投資か。まあ、好きにすればいい…。

しかし問題はここからでした。

「お小遣いで買えば?」

「えっ?」

「だって1万円くらいなら出せるでしょ?」

「……」

志穂の顔がわずかに曇る。これはまずった?

「いや、でも家のためのものだから、お小遣いじゃなくて家計から出すべきだと思うんだけど?」

「ほう?」

「それに、あなたも健康のために運動したほうがいいし」

「なるほどね?でも、俺はやんないしな…。」

「……」

しかし、次の瞬間、僕の頭の中で電卓がはじき出した。
1万円でルームランナーを買う → 志穂が健康になる → 70歳まで元気 → ならばその間働いてもらえばいいんじゃないか? →
一生働かせる契約を結ぶチャンス
完璧だ。格安案件や!

「よし、わかった。お小遣いで買わなくていいよ。俺が買ってあげる!志穂にはずっと健康でいて欲しいからね!」

「ほんと!?」

「その代わり、一生働いてね!」

「……は?」

「俺働くの好きだから、ずっと働いていたいんだけど、1人ではお店営業できないから、そうだなぁ、俺は75歳までは働くと思うから、志穂も69歳くらいまではよろしくね!」

数秒の沈黙。
そして次の瞬間——

「はっ! ふざけんな! そんな契約したいんなら五千万持ってこい!!」

怒りの鉄槌が下った。

1万円で生涯労働契約を結ぼうとした男の末路であった…

ご飯炊いてきます。